まじかいご。

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今も記憶に残る介護の体験~福祉用具編~

利用者さんの自立を支援するため、近年驚くほどの福祉用具が進化しています。特養や老健施設等では、利用者さんは、安全な環境の中で生活ができますが、在宅ではそうはいきません。実際、在宅で生活する利用者さんの援助をする中で、福祉用具にまつわる様々な体験をすることがあると思います。

今回は、訪問介護のサービス提供責任者、居宅のケアマネとしてそれぞれ活躍をされている2人に、福祉用具にまつわる体験談を聞いてみました。

部屋にベッドが入った!?

訪問介護事業所で、現在サービス提供責任者をしているMさんが、今でも忘れられないという利用者さんの話をしてくれました。

古い1戸建ての住宅で、単身生活をしていたHさんの訪問介護の依頼を受けたのは、今から数年前のこと。訪問介護の依頼をしたケアマネも、地域包括からの相談を受け、包括の職員と一緒に自宅を訪問した時には、驚いたと話すほど室内がゴミの山、山、山…。Hさんは、難病を抱えているため、既に自宅内で転倒を繰り返しながら生活している状態でした。

当初は、施設入所も検討されていたようですが、「自宅で暮らしたい」というHさんの強い希望がそこにはあったようです。もしこのまま自宅で暮らすのであれば、まずは生活する部屋を片付け、部屋の中にベッドとポータブルトイレを入れる必要があることをHさんに伝え、了解されたとのこと。

Mさんの事業所のヘルパー援助は、ある程度環境が整ってからスタートという話でした。しかしHさんの状況を考えると、転倒により骨折する危険性も大きくなってきているため、早急な対応が必要なことは関係者、誰もが理解していました。

そこでHさんの承諾を得て、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、福祉用具事業所、訪問介護事業所全体で協力し、部屋の片付けからベッド等設置するところまで行なうことになったのです。

片付け当日には、各事業所から手の空いた職員が大勢駆けつけました。約半日かけて、ベッドとポータブルトイレが入るスペースができました。最初は不安そうに見ていたHさんも、その後搬入されたベッドに座り、関わってくれた人達に「ありがとう」と何度も頭を下げていました。

この後、しばらくの間は在宅でヘルパー援助を受けて生活することができたのです。あの時のHさんの嬉しそうな表情を今でも覚えています。

大きすぎる家に住んでいるために…

ケアマネとして働くSさんからは、こんな話を聞きました。

利用者さんの自宅では、部屋が狭かったり、物が多すぎるため、ベッドなどの必要な福祉用具をどこに設置しようかで、色々と悩むことが多くあります。しかし、今回話をするKさんは、それとは反対で家全体がとても大きい、いわゆる豪邸と呼ばれる家に夫婦2人で住んでいたのです。

外見だけではなく、室内も、玄関から廊下、トイレ、浴室、そしてKさん本人の部屋に到るまで、とにかく広いのです。90歳を超えたKさん自身、最初に訪問した時点で、すでに室内移動に一部介助が必要な状態でした。

しかし、80代後半の妻との二人暮らし。さらに、Kさんは175㎝もある大柄な体格であるのに対し、妻は150㎝に満たない小柄な体格でした。当時は、どうにか介助をしていましたが、共倒れになることも十分予想されました。

Sさんがケアマネを引き受けてから、最初にした仕事は、室内を安全に移動するための環境を整えることでした。福祉用具の事業所の担当者とともに、自宅を訪問。ベッドはもちろん、室内や廊下の手すり、歩行器等、色々必要な福祉用具の検討を繰り返しました。

あまりに広いため、ちょっと家具や壁につかまって移動なんてこともできません。また徒競走ができそうな長い廊下も、既に両壁には手すりはついていましたが、広すぎるため、両手で手すりにつかまることはもちろん不可能。色々試行錯誤しながら、最終的に3ヵ月近くに渡り、福祉用具のレンタルをしては様子観察を行い、また必要に応じて商品を入れ換えるなどを行ないました。

その甲斐もあり、3ヶ月後には、本人も安心して移動ができるような同線が確保でき、妻の介助の負担も軽減されたのです。その間嫌な顔ひとつ見せず、搬入~交換~搬出等を繰り返して協力してくれた福祉用具事業所さんには今も感謝しているとのことでした。

まとめ

住み慣れた自宅で、少しでも長く暮らしていきたいと願う利用者さんはたくさんいます。しかし実際には、それぞれの利用者さんや家族の抱える事情により、それが実現できないこともあります。そうした中で、自宅の環境さえ整えば、まだまだ在宅で生活することが可能な利用者さんがいるのも事実です。

今回の体験談の中で、不可能と思える自宅の住環境を、利用者さんに関わる全てのサービスの連携により可能にできたこと…

ケアマネとして働く私自身も、学ぶことが多くありました。

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