介護職が正社員として働くメリット・デメリット
パナソニックは今月22日、子会社が運営する介護事業のパートを正社員化する人事制度を来年4月に導入すると発表しました。記事によると、1年以上勤務したパートの介護職に、時間当たりの賃金が正社員と同水準の「時間制正社員」への選択が可能となるそうです。人手不足が深刻化する介護業界で、正社員にして福利厚生など待遇面を改善し、優秀な人材を囲い込みたい考えだとのこと。
一般企業では、正社員として働けることは、雇用が安定するだけなく、福利厚生面でも優遇されるため、正社員を希望します。しかしこの介護業界では、正社員として働くことが、一概に良いと考えている人ばかりではありません。
そこで今回は、介護職が正社員で働くメリット・デメリットについて、考えてみたいと思います。
正社員で働くメリット
正社員になると、何が大きく変わるのでしょうか。
- 給与面が安定する
- 賞与の支給
- 昇格、昇給 ・福利厚生・社会保険等の充実
メリット面については、介護業界だからといって特別な変化があるわけではなく、他の業界と大きく変わらないように思います。実際に非正規社員として働いていた介護士が正社員になった時、どのようなメリット、デメリットがあったのでしょうか。
非正規社員から正社員になったAさん
20代前半の独身男性で、無資格の頃から非正規社員として、ある法人の特養施設で介護職として働いていたAさんの話です。非正規社員の頃には、比較的時間にゆとりがあったため、ダブルワークをしたり、介護福祉士の資格取得のための講習などにも参加していました。
その甲斐あって、念願だった介護福祉士の資格も、1回で取得ができたと言います。資格取得後には、すぐに上司から正社員の話もありましたが、日頃から正社員達の責任の重さを近くで見てきただけに、なかなか踏み切れなかったとのこと。
その後結婚が決まり、それを機に正社員になったAさんは、頑張って働き続け、ユニットリーダーの役割も担うようになりました。正社員になって以降、収入面、福利厚生面で安定した一方で、責任のある立場となり、自由もなかなか利かなくなったと・・・
そんなAさんに「責任が重い反面、その分だけやりがいも得られているのでは?」とたずねてみると 、
「正社員になって良かったことは、20代の若さで家を購入できたこと」
このように笑顔で答えてくれました。
Aさんの中では、正社員となって住宅ローンを組み、家族と新居で生活できたことが、一番のメリットなのかもしれません。
正社員で働くデメリット
正社員になったから、全てが良いことばかりとは言えないようです。特に介護の職場では、正社員よりも非正規社員の人数の方が多い現場もあります。
それだけに、日頃の業務の中で正社員が、自分の役割や責任の重さを痛感することも多々あると言います。正社員になったことで、反対に大変になったこととして以下の点が挙げられます。
- 有給や休みがとりにくい
- 残業が多い
- 本来業務以外の仕事を役割として担わされる
- 施設の行事等への参加
- 非正規職員の急な休み等への対応(夜勤対応や休日出勤等も含)
- 介護業務以外の仕事もある(勤務表作成等)
など、このように新たな問題は絶えずあるのが現状です。そのため、正社員ではなく非正規社員の方が良いのではないかと考える人も少なくありません。次は、正社員から非正規社員になったBさんの話です。
正社員をやめて、非正規社員になったBさん
子育てをしながらデイサービスの相談員として働いていたBさん。自分の働くデイサービスは、非正規社員が多いため、どうしても正社員の負担が大きい職場。
毎日のデイサービス終了後も、書類の多さ、繁雑な記録の整理等に毎日帰宅が21時、22時。 子育てと仕事の両立ができなくなり、精神的にも追いつめられるようになりました。
Bさんは、退職を考え上司に伝えましたが、色々と相談をした結果、非正規社員として残ることになったのです。
もちろん、今は相談員ではなくなりましたが、介護職として働くことで有意義な時間を得られていると、明るく話してくれました。時間にもゆとりができたことで、自分自身にもゆとりが生まれ、今は子育てをしながら、ケアマネの資格取得に向けても頑張っています。
Bさんの場合は、正社員ではなく非正規社員としての方が活躍できる働き方だったのでしょう。一人ひとり、状況が違うためどのような人でも、自分に合った働き方を見つけることが大事なのかもしれません。
まとめ
介護業界には、正社員、非正規社員に限らず様々な働き方があります。それぞれの働き方にはメリット・デメリットがあり、どのような働き方を選ぶかは自分次第です。
今回の介護事業所の職員の正社員化についても、色々な選択が可能となるようです。優秀な人材を確保するとともに、少しでも働き続けてもらうための、この企業の人材確保の戦略に、今後も注目していきたいと思います。