今も記憶に残る介護の体験~訪問介護編~
皆さんは、日々介護の現場で働く中で、多かれ少なかれ、色々な経験をしていることと思います。もちろんその中には、うれしかったことばかりではなく、辛いこと、苦しかったこともあることでしょう。
今回はそれぞれのサービスの現場で働く介護職の方に、自分が介護の仕事をする中で、心に残った出来事や、忘れられない出来事を聞いてきました。訪問介護編です。
世の中で、一番苦手な虫が!!
ヘルパーAさんが、これは心に残る出来事ではないけれど、決して忘れることのできないことだと、話をしてくれました。
私がヘルパーになって間もない頃、1人暮らしの男性高齢者の援助を担当することになりました。
一部屋しかない室内には、あふれんばかりの物の山。もちろん畳があるはずなのにそれも見えない状態。もちろん布団を敷くスペースさえもなく、その利用者さんは、その室内でコタツに丸まって生活をしていたのです。
私の仕事は、室内の掃除と食事作り。初回援助の際、まずは一番汚れていたコタツまわりの掃除をしようと、コタツの天板をあげた途端、黒い大きな影のようなものが移動したのです。一瞬何が動いたのかわからなかった私。それが100匹近い小さなゴキブリの大群だと気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。
ゴキブリが何よりも苦手な私にとって、この時のあの場面は、今も忘れられません。もちろん、あの援助があったからこそ、今もヘルパーとして頑張れていると思っています。
誰が、部屋を模様替えをしたの?
これは、ヘルパーのBさんが、90代の利用者さん夫婦の援助に入っていた時の話です。
私が担当していた夫婦は、ともに認知症が進行し、生活全般に支援が出ていました。夫は介助がなければ、ひとりで歩くことが難しく、元気な妻の方が、いつもそばで手引き歩行しながら、室内を移動していました。
しかし、ある時を境に、朝訪問すると、リビングにある家具が、前日と違う場所に置かれているようになったのです。重い家具などもあり、誰が動かしているのか当の本人達に聞いても、もちろんわかるはずはありません。心配になり、ケアマネから別居家族に連絡してもらい、一晩泊まってみてもらうことになりました。
翌朝、家族からの報告にびっくり!!いつも介助なしで歩くことができない夫が、夜中にひとりで、机やタンスを動かしていたそうです。
よく認知症の進行している人が、思わぬ底力を見せるという話は、聞いていましたが、まさにその通りだと驚きました。
あんなに、元気な姿で別れたのに
最後は、ヘルパーCさんの話です。
95歳になる単身女性の利用者さんを担当して5年。週2回の訪問を毎回楽しみに待っていてくれました。ある日の訪問時も笑顔で迎えてくれ、援助中も色々な話をし、帰り際には「また来週ねー」と窓から手を振ってくれました。
その翌日、家族から事業所に電話があり、母親が今朝亡くなりましたと…。私が訪問した後、娘さんが入れ替わりで来訪し、元気に食事までしたそうですが、翌朝そのまま目覚めることはなかったようです。
日々の援助の中での、利用者さんとのふれあいを大切にしようと改めて考えるきっかけになりました。
まとめ
訪問介護の援助は、利用者さんの自宅を訪問し、その人の生活の中に入るだけに、とても難しい仕事だと思います。今回の話を聞き、改めてそれを実感しました。